7年前に死んだ猫の声を思い出せなくなった。
とても悲しかった。
同時に安堵する私もいた。
思い出せなくなるほどの時間が経っていたんだ
頭の中に猫の声はあっても、それがあの子のものだったのかわからない
わからないけれど、思い出せなくなったこととして思い出すことはできる。
哀しさや失った時の痛みは無くならないと思う
ただ形や質が変化していくだけのように感じる
猫を型取った氷を初めて掌に載せた時、冷たくてとても痛かった
じっと見つめていると少しずつ痛みに慣れてきた
掌の体温で溶けている
体温と氷の温度が混ざっていく感覚があった。
途中、猫が近付いてきた
私が手を置いている場所が、いつも猫が座っている場所だったので、不思議に思ったのだろう。
私の手に寄り添ったり、溶けた水を舐めていた
(溶けた水は私の皮膚にも浸透するのだろうか)
この子を見ている間にも、手の中の氷は少しずつ形を変えていった。
私は、いつか思い出せなくなる日までの時を過ごしている。
それまではただ思い出していたい。