猫の背中を撫でて、かつてそこにあった小さな背中を思い出す。
友人に会って「またね」と言うと、もう会えない人のことをふと思い出す。
姿形は思い出せても、表情や眼差しまでは思い出せなくて、記憶を留めることの難しさを実感する。
記憶の中の存在は本来の姿とは少し離れていて、思い出すたびに自分から遠ざかっていくようだ。
イメージは時間と共に更新され、忘れられていく。
やがて何も思い浮かばない時が来るのだと思う。

記憶を頼りに確信の持てない顔の影を作る。
これまでは、個人を意識せずに制作してきた。
今は、「誰でもない誰か」ではなく、「あなた」だったことを大切にしたい。

Back to Top